生活の中の小さな違和感は、気づかないうちに積み重なる。
から揚げの大きさをめぐる些細な出来事が、
私の心の中で静かに何かを変えていった。
これは、その気づきの物語。
目次
小さすぎるから揚げと友人
我が家のから揚げは、年々小さくなっていった。
まるで家計の縮小に合わせて、から揚げも人生も少しずつ削られていったようだった。
私が作るから揚げは、元夫にとっては“大きすぎる”らしい。
初めてそう言われたとき、私はただ「え?」としか思わなかった。
大きいから揚げは嬉しいものだと思っていた。
でも彼にとっては違った。
「こんな大きいの食べられん」「もっと小さく切れ」
そんな言葉が続いて、我が家のから揚げはどんどん小さくなっていった。
気づけば、ひと口サイズどころか、
“から揚げのかけら”みたいな日もあった。
私はそれを当たり前のように受け入れていた。
ある日、友人を家に招いて食事をした。
久しぶりに誰かと食卓を囲むことが嬉しくて、
私はいつものように小さなから揚げを並べた。
すると友人が、箸を止めて言った。
「……から揚げ、小さすぎん?」
一瞬、空気が止まった。
私は笑うべきか、説明すべきか迷ったけれど、
そのとき初めて気づいた。
このサイズは、普通じゃなかったんだ。
から揚げの大きさひとつで、
私はどれだけ自分を小さくして生きていたんだろう。
友人の言葉は、ただの感想だったはずなのに、
私の胸の奥にまっすぐ刺さった。
あの日の食卓で、私は静かに悟った。
小さくなっていたのは、から揚げだけじゃなかった。
私自身も、気づかないうちに小さくなっていたのだ。