結婚当初は元夫の「うつ病」もすぐに治ると安易に考えていました。でも、その「うつ病」に10年以上も悩まされるなんて思いもよりませんでした。
病気への理解

元夫は、私と結婚する前に「うつ病」と診断されていた。
それを知ったうえで、私は結婚した。
いつか治る。
一緒に暮らしていれば、きっと少しずつ良くなる。
そんな希望を持っていた。
結婚するとき、義理の母から一冊の本を渡された。
「うつ病患者の家族が気をつけること」
そんな内容のガイドブックだった。
私は何度も読んだ。
言ってはいけない言葉。
してはいけないこと。
どう接すればいいのか。
少しでも夫が楽に過ごせるように、私なりに気をつけていた。
でも、いつからか状況は変わっていった。
私は出産を機に仕事を辞め、専業主婦になった。
すると、
「気楽な専業主婦なんだから、もう少しちゃんと家事をしろ」
そんな言葉を浴びせられるようになった。
私は、気楽なんかじゃなかった。
子どもの夜泣きに悩み、家事をして。
そして、夫の病気にも気を遣う。
でも、そんなことを言っても仕方がない。
病気なんだから。
私はそうやって、自分に言い聞かせていた。
夫は仕事をしても、半年も続かない。
転職を繰り返した。
そして失業すると、失業保険で暮らす日々・・・
子どもを育てなければならないのに、収入は安定しない。
私の独身時代の貯金も、少しずつ減っていった。
通帳の残高を見るたびに、不安になった。
この先、どうなるんだろう。
子どもをちゃんと育てていけるんだろうか。
そんな不安を抱えながら暮らしていた。
それでも私は、夫の病気を責めないようにしていた。
ストレスは、うつ病に良くない。
だから、夫がやりたいことには、できるだけ口を出さなかった。
パチンコにも行く。
釣りに行く。
野球クラブの集まりに行く。
それはいい。
夫が少しでも気分転換できるなら、それでいいと思っていた。
でも、
家族で出かけようと誘うと、行ってくれない。
子どもと一緒にお留守番も嫌がる。
そのうち、私の中に小さな疑問が生まれた。
どうして自分の好きなことはできるのに、家族のことになるとできないんだろう。
そして、いつしか私は、
「病気を理由に、わがままを通しているだけなんじゃないか」
そんなことまで考えるようになった。
そう思ってしまう自分が嫌だった。
病気で苦しんでいる人に対して、そんなふうに思うなんて。
私は冷たい人間なんじゃないか。
もっと理解しなければ。
もっと我慢しなければ。
そう思うほど、自分の気持ちは行き場を失っていった。
夫の病気を理解したかった。
支えてあげたいと思っていた。
だから結婚した。
でも、家族になった私は、少しずつ疲れていった。
夫を責めることもできない。
自分を責めることもやめられない。
どこまで我慢すればいいのかも分からない。
ただ、出口のない闇の中にいるようだった。
あの頃の私は、
「病気を理解すること」と
「自分が傷つくことを我慢すること」は、
同じではないということを知らなかった。
