22年前のことなのに雪が積もると鮮明に思い出す出来事です。今思い出せば赤ちゃんなんだから泣かせておけば良いし、元夫に対して想いをぶつければここまで辛いと感じなかったのかもしれない。でも、当時の私はすべてに必死でそんなゆとりさえ感じられなかった。
雪の日の電話
ある雪の日のこと。
長女の夜泣きがひどく、私は慢性的な睡眠不足だった。
その日も夕方、長女を寝かしつけていた。
やっと眠ってくれた。
ほんの少しだけ、ほっとした。
このまま少し眠ってくれれば、私も少し休める。
そう思っていたとき、携帯電話が鳴った。
元夫からだった。
長女を起こさないように、そっと電話に出る。
「外の雪を見てほしい」
そう言われた。
私は、
「今、寝たばかりだから、もう少ししたら見てかけ直す」
と答えた。
すると、元夫が突然怒り出した。
「俺が雪の中帰って、死ぬのと、長女が起きるのと、どっちが重要なんだ!」
私は電話を握ったまま、何も言えなかった。
心の中では、
別に、雪の中を帰ってくるだけで死ぬわけじゃないでしょう。
そう思っていた。
でも、そんなことを言える雰囲気ではなかった。
私は仕方なく起き上がった。
眠っている長女を起こさないように、そっと外を見る。
雪は5センチくらい積もっていた。
「5センチくらい積もってるよ」
そう伝えた。
そして、電話を切った。
その直後だった。
やっぱり長女が泣きながら起きた。
せっかく寝たのに。
また抱っこ。
そして、抱っこしたまま夕飯の準備。
寝不足で頭はぼんやりしていた。
体も重かった。
それでも、やるしかなかった。
しばらくして、元夫は雪の中を無事に帰ってきた。
私は、
よかった。
無事に帰ってきた。
そう思うより先に、また不機嫌な態度をぶつけられた。
その日の私は、もう何がなんだか分からなかった。
ただただ、辛かった。
今振り返ると、
私はあの頃、本当に疲れていたんだと思う。
あの頃の私は、
自分がどれほど疲れているのかさえ、分からなくなっていた。
ただ毎日をこなすことに必死だった。
そして今でも、雪を見るとあの日を思い出す。
外に積もった雪は、たった5センチだった。
でも、あの日の私には、
その5センチの雪さえ、
途方もなく大きなものに感じていた。
