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古い服を着て怒られた日から、離婚に向かっていたのかもしれない

人生には、後から思い返すと妙に面白くなる出来事がある。
私の15年の結婚生活には、そんな“笑えるのに笑えない”瞬間がいくつもあった。
これは、その中でも特に印象に残っている、ひとつの短い物語。

目次

古い服と私と夫

離婚を決めた日のことを、今でもよく覚えている。 15年の結婚生活は、長かったようで、妙にあっという間だった。 友人には「あなたの人生だけは嫌」と笑われるほど、 いろいろな出来事が詰まっていた。

私は夫と8年付き合って結婚した。 若い頃の恋愛は、勢いと希望でできている。 「この人となら大丈夫」と思っていたし、 実際、結婚してしばらくは穏やかだった。 長女が生まれたときは、世界が明るく見えた。

けれど、生活というものは、気持ちだけではどうにもならない。 私は出産を機に正社員の仕事を退職し、 夫は転職を繰り返し、家計はどんどん傾いていった。

家計簿を開くたびに、数字が私を睨んでいた。 「また赤字だよ」と言われているようで、 ページをめくる手が重くなる。

そんな日々の中で、夫婦仲は静かに、しかし確実に悪化していった。 会話は減り、ため息は増え、 ふたりでいるのに、どこか寒い。

ある日、私は古い洋服を着て買い物に出た。 10代の頃に買ったものだから、流行なんてとっくに過ぎている。 でも、少しでも日々の代り映えのない自分の姿に彩を加えたかったのだろう・・・

帰宅すると、夫がその服を見て眉をひそめた。 「また新しい服買ったのか」

私は一瞬、言葉を失った。
「お金がないのに買えるはずがない」という当たり前のことさえ言えなくて、
そのまま胸の奥に押し込んだ。
そして、絞り出すように「昔のやつだよ」と返した。

そんな些細なズレが続く中、気づけば13年という長い時間が、私たちを夫婦というより、ただの他人よりもさらに遠い存在にしていた。

今振り返ると、あの頃の私は、 世界でいちばん不幸だと思っていた。 でも、もしかしたらただ単に、 古い服が似合っていなかっただけかもしれない。

そんなふうに思えるくらいには、 私はもう前に進んでいる。

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